「レゴで、灘校つくろうや。」
〜灘校武道館ができるまで〜

時は2009年、冬。
文化祭に参加する予定のクラブ、サークルが参加する旨を生徒会に提出する時期になった。
もちろん我々LEGOサークル員が文化祭のことを忘れていたはずもなく、皆は喜び勇んで用紙を取りに生徒会室へ向かった。

しかし、2010年の文化祭には1つ問題があった。

我々はその頃高2である。高2とは、受験勉強で忙しい高3がクラブを引退し、新しく部活のキャプテンとして部を引っ張っていく学年なのだ。
当然、文化祭の準備は高2が主体になって進めることになる。
そして、灘の文化祭では結構な数の運動部が参加する。柔道部もその一つだ。

ここでクイズだ。にーなと部長(笑)はともに柔道部であり、柔道部には我々を含めて3人しか高2がいない。その上もう1人は化学研究部に入っており、やはり高2として忙しく働いているのだ。柔道部はどうなるでしょう?
柔道部に高2いねーじゃねーか!
流石にこれはまずい。2人のうちどちらかは柔道部主体で働かないといけないだろう。
そうして、LEGO部は今までの仕事と作品を考えて全員一致で責任者をにーなに変え、部長(笑)創設者(笑)に名前を変える事になった。

※これだけ柔道部について語っているのは、筆者が柔道部部長であることと、LEGO部によって、文化祭準備においておそらくもっとも甚大な被害を受けたであろう部だからです。あまり気にしないで下さい。

さて、責任者も決まり、書類も提出して準備が整った俺達は、
特に何もしなかった。

2,3週間に1度集まるだけで、しかもそのときはずっとグダっているという有様。
2度も文化祭で大好評という完全勝利を収めたことによる余裕によるものかも知れない。
少なくとも2学期の間は動かなくても間に合うだろ的な雰囲気が漂っていたことは間違いない。
結局決まったのは、レイアウトと部誌のページ数くらいだった。

部誌は30ページ、印刷限界の800部刷ることに決定。
限界というのも、どうも最近印刷物が増えすぎて生徒会は手が回っていないらしい。
それに伴ってか部誌の締め切りが大幅に早まり、3学期の終わりごろに生徒会側が発表した締め切りは、
4月9日 だった。なんだ、と思う人も多いかもしれない。しかし、春休みだ。一部のクラブは合宿がある。一部のオリンピックの2次選考もある。宿題もある。そして何より、 短い!
短いんですよ。2週間くらいしかないんですよ。まあ3月の後半はテストとその後の臨時休暇とか午前授業とかスポーツ大会(全て試験の採点のため)とかで実質春休みなんだけどね。
そういえば小学校の頃とかは春休みって宿題無かったよな……。
高2って大変なんだな……まあ国語も英語も30ページちょいの薄めの問題集だし、数学は提出義務無いから大丈夫なんだけど。

話がそれてやがる。まあ俺が言いたいのは、締め切りが早すぎんだよ、ってこった。
4月5日にそのことを思い出したにーなは、皆にメールを送りつつ自分の分の部誌の構想を練っていた。

にーな『さて、9日が部誌締め切りなわけだが』(メール原文ママ)
ブッダ『部誌?殺人兵器ですか?締め切りすぎてもいいなら書けるかもしれんが……』
HIwai『今日から書こうとしてる 構想がかたまったからなんとか締め切りに間に合わす』
にーな『つーか宿題手をつけてない。最終日に全部やるのは確定的に明らか』
ブッダ『予定調和ですね (´_ゝ`)』
HIwai『宿題をすてればよい! なんとかしよ』
にーな『俺立体について書く予定なんだが被ったりしてない?』
ブッダ『被らないことは自明(なんとなればまだ書いていない)ていうか「立体」について書くってのは、立体作品の設計図の作図法について書くってこと?』
にーな『そう』
HIwai『多分被らないと思われ』
ブッダ『うっ… 仕事は蓄積する一方だ… どれくらいできるかは締め切りが延びるかどうかによるな…』

   *      *      ここから結構雑談      *      *

にーな『で、お前ら書いてる?』
ブッダ『>>で、お前ら書いてる? 時間が一次元しかないことを恨むことしかできない』
HIwai『さぁ、明日から本気出すか☆』
ブッダ『ヒント:VOD10:00〜16:00 パンフレット明日締め切り まあ朝までパソに向かう覚悟は一応ある』
HIwai『あきらめんなよ てかメール打つ前にやれwwwwwww』
にーな『後書き書きたい人いるー?いないなら書くけど』
HIwai『あ、かきたいー』
ブッダ『書きたい人皆で書けばいいんじゃね?』
(後略)
※これからもメールの内容は『』で、会話は「」で表記します。

この後少ししてにーなは寝落ち。ブッダは朝まで頑張っていた模様。
始業式の日、全員を集めて聞いてみたところ、書けているのは俺だけということが発覚した。
多分印刷課が気心の知れた同じ高2というのもあり、ほぼ全てのクラブが4月9日に間に合っていなかったのもあってか、印刷課がもうちょっと待ってくれるらしいというのをHIwaiがメールで流したことが大きかったらしい。

それでもやはり早く出したほうがいいのでHIwaiは土日深夜までかけて部誌を書き上げた。ブッダも、TOPでも言ってましたが毎日睡眠時間を4時間まで削って頑張っていたらしい。にーなは書き上げてしまってすることが無いが、流石に時々2人のメールが来るというのに寝るのは気まずかったので、彼らの負担を減らそうと自分の分を増量。そして目次を色々変えてみたりしていた。

土日明けの12日。にーなは皆書き上げただろうと思って学校に行ったものの、ブッダがまだできていないと言うので、印刷課の奴に謝ってその日は帰る事に。
翌日。ようやく原稿が揃い、提出……といこうと思ったら、B5の用紙が切れるという事態が発生。その日も提出することはできず、しかも裏表紙というものの存在をブッダが忘れていたため、即興で描くことに。

ブッダ「もう裏表紙とか無くていいやん」
にーな「だから最初から校章なりLEGO部のマークとかエンブレム的なものを描くだけでいいって」
ブッダ「ああもう!」
その後十数分でブッダが書き上げたのがあのロゴです。部誌をもらえなかった、という人はprojectsの下のほうにzipで置いといてますんで見てみてください。

その後。13日から16日までは校舎や個人作品のパーツ発注に時間を費やし、旧校舎などの改装用のパーツを買い漁っていた。
誤解してる人いるかもしれないけど、個人作品は全部自腹なんだぜ。学校の金で買ってるわけじゃないんだぜ。つーか予算とかww毎年校舎だけでも2〜3万の赤字なんだよwww他のサークルと同じ値段しかもらえてねーからなwwwあんな雀の涙ほどのはした金で何をしろとwww
おっと、あまり生徒会のけちさ資金運用の素晴らしさを言っても始まらない。次へ行こう。

一応グダグダしているように見えて、にーな は おぎ と一緒に武道館の周りを歩き回って、どれくらいの大きさになるか計算していたのだ。おぎは写真とか全体を見回した動画をたくさん撮ってくれた。

そんなことをしていたら、階段装飾の締め切りが近づいていることに気付くわけも無い。当日になってようやく気付くという有様である。
デザイン担当のブッダがフォントに凝ろうとするのはいつものことなのだが、今回は可読性が大事ということをわかってくれたので、至極真っ当なものになった。


完成図である。
見ればわかるけれども真ん中が我々のもの。
一番下のぜんぜん見えないのは
柔道部の。
高2がいない被害は想像以上に大きかったらしい。



大体の締め切りから開放されたので、早速作り始める俺達。やればできるんだぜ、普段やらないけど。
しかしやはりグダグダ感はぬぐえず、設計したのは1階部分だけだったので、このとき作れたのは1階だけだった。

机の上にあるのはにーなが描いた図。柱の位置や窓の作り方も描いてある。1階だけだけど。

しかし、窓の枠に黒プレートがいることを誰も予想していなかったので、窓をここまでしか作れずこの日は終わり。
暇なので旧校舎の補強でもしようか、ということになって旧校舎をダンボールから取り出す。
去年の文化祭報告を見ていただければわかると思うが、旧校舎には構造上欠点がある。
壁が薄く、かつ長いため、折れかねないのだ。
去年は真ん中に柱を立ててテラス部分を支えていたが、パーツを大量に使うため今年は中に梁を通すことに。


ついでに廊下も作ってみようとする。しかし廊下の水色(パステル青)は結構珍しいパーツで、全部そろえることができなかった。適当に黒板もつけてみたが、あまりのお粗末さに作ったにーな本人が一番気に入ってなかったり。

することが殆ど無くなったちょうどその頃、部誌の印刷が終わったとの連絡が入る。締め切りを破ってしまったのにこの速さ、やはり人脈というものは印刷課は素晴らしい。

仕事ができたので、ニート脱出、と意気込んでハローワーク、じゃなかった、生徒会室の隣の印刷室に部誌の原稿を取りにいく。
持って帰ってきてすぐに、ページごとに分類して机の上に並べる。重ねていくだけで部誌ができるように机に生産ラインを作って、5人(その日は塾やなんやで人がいなかった)の内4人が机の周りを周回し、1人が狂ったようにホチキスで留めていくという超単純作業が始まった。

ホチキス役はHIwai。30分後、彼は生産ラインより早くホチキスを操り、さらに叩きすぎて突き出たホチキスの針をハンマーで叩く、という自称「神の領域」に達した。
そして4人が同じ生産ラインにいると詰まってしまってどうしても遅くなってしまうので、2つ目の生産ラインを作る。

HIwai「デュアルコア方式!」
いまむー「ソフトウェアが対応しておりません」
HIwai「Fuuuuuuuuuuuuck!!」
いまむー・にーな「黙れ」

結局その日はクアッドコアにまで進化して(流石に自称「神」は追いつかなくなり、いまむーがハンマー役になった)400部ほど出来た頃に下校時刻の放送が入り、帰らないといけなくなってしまった。
しかしまあ翌日に800部完成したので、去年ほどには部誌が時間を奪うことは無かった。
(去年は文化祭準備期間中に刷り上ったので文化祭2日前まで部誌を作っているという素晴らしい状況だった)

当然武道館の組み立ては遅々として進んでいない。 しかし時は無情にも過ぎ去り、武道館がこの状態のまま文化祭期間に突入してしまう。
文化祭期間というのは確か28日ぐらいからで、この日は放課後机移動があり、学校全体が文化祭用の机配置に変わる期間だ。
そして今まで放課後の教室(机で埋まっている)でしか作業をできなかった我々も、ついに広々とした自由に机を動かせる教室で作業ができるようになったのだ。
といってもその日はブッダが4時30分から塾、いまむーも塾で、あまり人がいなかったが。
教室さえあれば我々は無敵である。

翌日、HIwaiとおぎが箱を持ってきた。これはHIwaiの案で、皆が持っている箱を展示することで壁付近の空虚さを減らすことが出来るのでは、という読みだった。割と成功したんじゃないのかな。

箱。別荘セットが多いのは去年や一昨年、タン色のパーツをこのセットに頼っていたからだ。その数は全員分合わせれば10箱を超えるんじゃなかろうか。俺んちにも2個あるし。


次に机を並べ、本来の位置に近い場所で校舎の組み立てに入る。
以前の校舎も並べて実際の位置に置いてみると割と壮観。

武道館はパーツ不足のためなかなか組み立てが進まないため、にーなは個人作品であるゆっくりを制作。
ブッダは旧校舎のでかい窓にかねてから考えていた枠縁をいれる作業に入った。
とりあえず窓を外し、縦横が何スタッド(ポッチの意味)になるかをLEGOの縦横比を頭に入れつつ計算。大きさを変えずにブロックを積む向きを変える。

そのとき出てくる端数をプレートを枠のように入れることで調整し、端はポッチが出ないようにタイルを張る。

あとは端のプレートを少し内側に突き出させ、内側の壁の裏で固定する。それを3回繰り返して、去年までハリボテ感があった壁が見違えるようによくなった上、クリアパーツも15個余らせることに成功した(枠の部分のパーツは追い出される!)。


そして出来上がった窓。

いい感じに出来た。


言っている間におぎとキクチとKazとひごたんは少ないパーツからも頑張って武道館を作ってくれる。

やっぱり持つべきものは仲間だよね!
と、内向的で人見知りの筆者が申しております。


時を同じくして教室の反対側ではゆっくりがほぼ完成しつつあった。
内側にスピーカーを入れて喋らせるつもりだったため中身は空洞、下側も閉じていない。

なんとなく哀愁漂うにーなの作業台。光の差し込み方が問題なのだと思われる。


その日はこれで終わり。黒板には謎の文章が出現していた。


「毎日8時40分集合で。
がんばろう
己自身で仕事を見つけろ
それか進んで指示を仰げ」


通りがかった何人かの他クラブの人が「なんかいいねぇ」と言っていた。
文章が良かったのか文化祭っぽい雰囲気が琴線に触れたのかはわからない。 ちなみにHIwaiが書いた。

翌日。早起きしたにーなは7時30分頃に教室に。8時過ぎごろにHIwaiが到着した。その第一声が
HIwai「フォッケウルフ運ぶの手伝って!」
にーな「……まあええけど」

卓球場横の西門に行ってみると、HIwaiの家の車が。トランクの中身を取り出して、教室まで運ぶ。2人で衣装ケースに一杯のレゴを運んだ。1人1つ運ぶことで2往復で済んだが、なんだかんだいってLEGOは皆が思っているより重いため、少しの間腕が痛かった。

帰ってきてすぐに個人作品の制作を始めるHIwai。しかし贔屓目に見ても完成しそうにない。まあ毎年こうだったし大丈夫かな、と思いつつも今まで作ってきたものとは明らかに大きさが違うため非常に心配だった。

さらに心配なのはHIwaiがクラシック研究部であることだ。……そうら来た。
クラ研の人「HIwaiー、リハやるから来い」
HIwai「いつ?」
クラ研「今」
HIwai「ちょっと今やばいねん。俺のときだけ行っていい?」
クラ研「もうそんなんどうでもいいから来い」
にーな「」イラッ

天下のLEGOサークルをどうでもいいとは何事だ、と多少イラッと来たものの、こっちもクラシック研究会なんてどうでもいいと思っているんだから相手もそんな感じなんだろう、と思って気分を落ち着けた。
まあどっちも超人気サークルだしね。歴史で言ったら向こうが長いかもしれないけど、中2にしてサークルを立ち上げ、道なき道を切り開きながら花形のクラブの定位置である旧校舎1階での展示にまでこぎつけたこっちだって相当のものだ。仲良くしていこうじゃないか。


クラ研のリハの合間を縫って作業するHIwai。と助っ人。白いのがHIwai。
いまむー他数名で(LEGOサークルじゃない通りすがりの人もいたけど)HIwaiの言うパーツを選り分け渡す。筆者も手伝ったよ!


1日経ってまた新しくパーツが届いたため、張り切って校舎を作る部員達。
2階の組み立てに入っていたが、おぎが撮ってくれていた写真のおかげでどんどん作っていくことが出来た。



HIwaiがクラ研のリハーサルに行っている間に、にーなと前部長(笑)は車輪のコピーを作っていた。
写真はそれを確認しているHIwai。


そして翌日。また7時過ぎに到着したにーなは旧校舎4階のテラスに登り、携帯で写真を撮って帰ってきた。

そしてすぐにテラスの設計図を黒板に書き、1つ1つの窓の大きさを計算する。
するとなんと、1ポッチにしないといけない柱の内1つがどう頑張っても2ポッチ幅になってしまう!

まあいっか♪

完成図。丸い柱と普通の柱が交互に並ぶはずが、1箇所(写真奥)普通の柱が丸くなっている。でもまあこんな細かいところ誰も見ないからいいもん。

出来ばえを写真にとりつつ満足していると、



ブッダ「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
突如、ブッダが悲鳴を!
何事か、と駆けつけてみると……

水分子「……」
完全に沈黙。
目標の破壊を確認しました。

ブッダ「はぁー」
溜息とも「はぁ?」ともとれるような彼独特のアクセントを用いてコメントするブッダ。


その後30分もかからず水分子は元通りになりましたとさ。

その日の夕方、部員達の働きにより武道館がほぼ完成。屋根を張るだけまでこぎつけた。

早いな。
さすが精鋭たち。


さて、武道館の屋根は傾いている。それは設計どころか灘に入学したときからわかっている。
この傾いた屋根をどう再現するかが、リアルさを決めるのではなかろうか。
そう思って、ただのスロープパーツを使うのではなく板を傾けて付けることにした。


大量にヒンジパーツを使って傾けた屋根。固定はこの1箇所のみである。

その日はここまで進んだ。文化祭2日前、4月30日のことである。

遠くから写真をとるとさらにそれっぽい。
まあ片面しか屋根は出来ていないが。



その頃HIwaiは、戦っていた。


手がぶれて写るほどの焦りようである。
そろそろ間に合いそうに無いのが見えてきた頃なのだから当然かもしれない。



HIwai「本物が翼が傾いてるからこれもそうしなあかん!」
もう少し小さいスケールならそんなこと「出来ませんでした〜」で済む話なのに、この大きさにしたことがあだとなって彼に襲いかかる。




翼の仮止めは終わった。しかし、まだ胴体が見えていないのが気がかりである。何せ、もう4月30日なのだ。5月2日には完成していないといけないというのに。



車輪を付け終わり、羽を上下に傾かせるためにさらに技術を駆使するHIwai。彼の脳内でどれほどの計算が行われているか我々に知るすべは無い。



HIwai「もうこれで完成でよくね?」
彼の精神崩壊が始まった瞬間である。




ほれみろ。



夜が明けて5月1日。校舎はほぼ完成し、朝早く訪れたにーなが部屋の掃除を行い、レイアウトを展示の状態にした。
まあ今掃除してもまた汚れるかもしれないが。
昨日まであったHIwaiのプレイランド(HIwaiが組み立てに当たって占拠していたエリア。本人命名)が片付けられたため、机運びはスムーズに終わった。そして完成している作品をあまり考えずに並べ、パネルを立てる。

その日、ブッダは去年も展示したパズルたちを家から発掘してきて、復活させようとしていた。
特に知恵の輪ははめるべき所の色を変える等、去年より磨きをかける。

ブッダの作業台。
パズルの修復作業中である。


しかし、パズルのほうは進んでいてもブッダに最初から言い続けているパネル展示はそのまま。ブッダが一番字が上手いので毎年書いているのだが、今年はブッダはゆっくりしていっていたため5月1日時点でも未だパズル紹介の一部しか書けていなかった。

よって人物紹介は好きな○○を連呼するという何も考えなくていい形に決定。
画像を持ってきてくれと言われていたのに持って来忘れたにーなとHIwaiは「のーいめーじ」にされた。


強化されてこの世に復活した知恵の輪。初期位置が色によって見分けられるようになった。



結局パネル展示はほとんど書きあがらないままその日はタイムリミット。
ブッダは模造紙を持って帰ることに。

ブッダがパズルを直している間、校舎組のKaz、おぎ、キクチは暇そうにしていたため、ちょうど持っていたにーなのトランプでポーカーを始めた。
にーなも参加していたが、HIwaiに「今日パーツの届け先学校にしといたから事務所に言っといて」と言われ、事務所に行った。

にーな「あのー」
事務員「なんでしょう」
にーな「えっと、今日、学校に【HIwaiの本名】あてで荷物が届くと思うんですよ。それを預かって欲しいんですが」
事務員「何時ごろ?」
にーな「あー、多分4時ごろだと」
事務員「【HIwaiの本名】あてやね?わかりました」
にーな「有難うございます、ではよろしくお願いします」

そしてポーカーに興ずること30分程、時計を見ると……
4時15分
キクチ「もう来てるんちゃうん」
おぎ「あ、ほんまや」
にーな「行ってくる!」
ステージのリハーサルをしている中庭を突っ切り、準備が終わったのか中庭を眺めている人たちを尻目に、にーなは一目散に事務所に駆け込んだ。

にーな「えーっと、【HIwaiの本名】あての荷物、届いたでしょうか?」
事務員「ああ、届きましたよ」
そういって事務員さんが取り出したのは紛れも無く我々のパーツ。
にーな「有難うございました!」
事務員「いえいえ」
にーな「失礼しましたー」ガチャッ

そのまま小さめのダンボールを小脇に抱え、来たときと同じように中庭を疾駆する。
教室に入ってダンボールを掲げた。
にーな「来たぞ!」
皆「イイヤッホゥゥゥゥゥ!!」
みんなのやる気は最高潮に達し、ダンボールをあけてすぐにHIwaiに連絡する。

にーな「もしもしHIwaiー、パーツ届いたで」
HIwai「わかった、2枚目の納入書に書いてあるのが多分俺のんやから他のは使ってええよ」
にーな「おk、お前が帰ってくる頃には仕事無いからな」
HIwai「言ってろwww」

実際HIwaiが帰ってくる頃には仕事は終わっていた。
入っていたのは主に天井用のでかいプレートで、敷き詰めるだけの簡単なお仕事だったので皆でよってたかってしているとすぐに終わってしまったのだ。

つぎのひ!

5月2日未明、にーなは家で作品紹介を書いていたのだが、なんと家のプリンタの調子が悪く、かすれて一部見えなくなるという事態が発生。
俺書くの早いし5時前に起きりゃ間に合うだろ、と思っていたのが甘かったのだ。

(原文ママ)
5:30 にーな『おい プリンタがおかしい 誰か助けてくれ 泣くぞ俺は』
5:37 HIwai『コンビにで印刷できなかったっけ?』
5:38 にーな『コンビニで? マジで? コピーでなく?  まあとりあえずうpする』
5:42 HIwai『なんかセブンイレブンにメディア射すところがあるような…』
5:46 にーな『マジか セブイレってどこにある? 近くに無いんだが』
6:07 HIwai『住吉にあるよ ねみい』
6:08 にーな『住吉だと!? 駅ん中は俺金かかるんだが』

6:11 にーな『あのプリンタ無いん? 一昨年使ったプリンタ』
6:11 HIwai『ないおー マックのしたや』
6:13 にーな『おk 行ってみる』

※灘校への通学路は主に三種類あり、JR住吉から通っている者、阪神魚崎から通っている者、阪急岡本から通っている者がいる。にーなは阪神組。

すぐに阪神魚崎から住吉駅へ向かうにーな。セブンイレブンを発見して中に入り、プリンタのところへ行くも、それらしきものが無い。
仕方がないので店員に聞いてみる。

にーな「あのー……」
店員「はいなんでしょ」
にーな「ここのプリンタって、印刷とか出来ないんでしょうか?」
店員「印刷?コピーのこと?」
にーな「いやコピーじゃなくて……USB、データから印刷って、出来ないんですかね?」
店員「えー?出来んのかな?」

店員のおばちゃんは隣のレジのこれまたおばちゃんと顔を見合わせる。

にーな「友人がセブンイレブンで印刷できるって言ってたんですけど……」(パシリと思われそうでやだな……)
店員「んー、じゃあできんのかな……」

店員がコピー機の前まで行くのについていくにーな。

店員「あっ、これちゃう?」
そういって店員がUSBの差込口を見つけてくれた。カバーがかかっていて、パネルで印刷の設定をすれば開くらしい。
見つけられなかった自分が少し悔しかったり。
にーな「あ、これか 有難うございます」
店員「いーえー」

そして印刷しようとすると……
wordが対応してねぇ!
ついでにtxtにも対応していない。一太郎も当然アウト。
仕方ない。jpgが対応してただけでもよしとしよう。
もしこれでjpgも対応していなかった日にはこのUSBの差込口に
バッファロー製の本体が5mmしかないUSBメモリを挿して挿しっぱなしのまま帰ってやるところだった。 危ない危ない。
(あれを本体からどうやって抜くのか誰か持ってる人教えてください)

6:33 にーな『wordが印刷できないんだが』
6:36 HIwai『なんと(; ´д⊂) すまんにーな』
6:52 HIwai『30分スギにつく ちんたらしすぎた すまん』
6:53 にーな『いい 片付け&レイアウト作成中』
6:58 HIwai『おつ。クラ研の朝練からちょい時間割いてレゴ行きま』
7:22 ブッダ『馬鹿な…寝過ごした… 俺も30分過ぎる』

さすがブッダ、期待を裏切らない (#^ω^)ビキビキ

その朝はてんてこ舞いで、9時開店の上点呼が8時40分にある。点呼が終われば大抵の生徒は回り始めるので、実際の開店時間は50分くらいだ。
8時50分までにしなければいけないこと
・模造紙展示を貼り付ける
・パズル説明の残り2つを書く
・綺麗に掃除する
・どこかのパソコンで作品紹介を印刷する
・看板を作る

どうみても不可能です、本当に有難うございました。
と言っているだけではいけない。1つでも多くやっとかないと。
そう考えて、簡単さと重要さを考えてランク付けした結果が次の[ランク]。

・模造紙展示を貼り付ける[AA]
・パズル説明の残り2つを書く[AA]
・綺麗に掃除する[B]
・どこかのパソコンで作品紹介を印刷する[A]
・看板を作る[B]

看板はほぼ不可能だし、少しの埃は外来の人は気にしないだろう。多分。
作品紹介はなくても何とか……なるかなぁ。
しかし、模造紙がなかったらパネルが何のためにあるのかわからず寂しい。
それにパズル紹介は描かないとパズルが壊される確率が上がる。ただでさえ壊されるってのに。

よって優先順位はこんな感じ。
このうち模造紙はブッダが内容を打って印刷してきた紙を貼り付けることにして3人がかりで頑張った。
模造紙をパネルに張ってからその上に紙を張れば画鋲が少なくて済むことに1つ目のパネルが埋まってから気付いたが、後の祭りだった。



作品紹介は、生徒会がありがたいことにプリンタを貸してくれたため印刷することができた。
有難う生徒会!君たちの事は忘れないよ!



完成した武道館。とその他。


本館の中庭側は本物と同じく花を植えておいた。これも気が遠くなりそうな単純作業だった。
悟るにはいいかもと思ったがブッダは特に何も悟らなかったらしい。



そして9時になった。開店!

開店と同時にわっと人が押し寄せる……などということはなく、最初のうちは校内生が10人ちょっと来るばかりだった。



しかし半時間も経てば人がだんだんと入り始める。



昼ごろには大盛況に。もうずっと人大杉。



去年も来ていたダンボールを体中に装備し妙なことを書きなぐっている「若気の至り」。去年頭の部分に「若気の至り」と書いていたのでこう呼ばれることに。今年は触ると火傷するらしい。


去年から始めたのだが、受付付近でお客の延べ人数をカウンターで計測している。
出口から入った人は数えられていないが、それでも10時44分には1000人を、12時14分には2000人を記録した。


休憩所という名の修理所。中では壊れた作品の修理や、名札作り、書ききれなかった模造紙の続きなどの作業をしていた。忙しかったので昼飯もここで食べた。差し入れをくれた方々、感謝してます。



出口付近に設置したコメント欄。
真っ白のうちは誰も書かないのだが、一人が書き始めると皆書くのは日本人らしい気もする。


外国人の方の英語のコメントや、小学生のものと思われる「LEGO部入りたい」、「灘中いきたい」などの微笑ましいもの、にーなの母からの「嫁は3次元でお願いします」という痛烈なご意見、「ブッダの弟でーす」と言う感想でも意見でもないもの、「お粥とは、人類最大の愚行である」というそもそも意味がわからないものなど様々だった。

途中、作品の破壊は去年や一昨年と比べれば少ないと言えるがやはり困り者だった。特にパズルは、出来ないなら外す、というやり方をする輩がいるのだ。それってパズルって言えないっしょ、やっぱ。
まあ写真を撮っておいたし、原型をとどめないほど壊されることは稀であったため何とか切り抜けることが出来た。

希望者に配っていた部誌も2日目の2時頃にはほぼなくなり、全て順調に推移していった。
ブッダの弟がやってきて、集合写真を撮ってくれるというので撮ってもらうことに。
ブッダの弟は、まだ中学生だと言うのに180を超えているという高身長だった。俺なんか去年179だったのにまだ180になってないんだぞ。もう成長しないかもしれないんだぞちくしょう。

このサイズなら顔判断付かないしいいかな?イヤってメンバーがいたら手を上げてくれ。すぐに消す。ブッダが。

世間の「灘なんてキモヲタばっかなんでしょ?あのAAみたいな」っていう幻想をぶち壊す!

ちなみに筆者は真ん中。

結局、1日目の来場者数は3480人、2日目は3522人。
最後の10分程、7000人まで残り12人のままお客さんが来なくなってしまった。
是が非でも7000人を突破したいと言っていたところにイツワリ氏と数学研究部のtau氏がおいでになり、「俺が7000取る!」と叫びながら出口と入り口を往復なさった。そのおかげでLEGO研はめでたく来場者数7000人を突破したそうな。めでたしめでたし。

にーな「いや絶対出口から来てた人12人以上いるって」
ブッダ「ですよねー」
にーな「これくらいいいよな」
ブッダ「いいです。問題なし!」

そうして、楽しい時に終わりを告げる放送が鳴り響く。

放送「本日は、第64回灘校文化祭にお越しいただき、まことに有難うございます。ご来場のお客様に、お知らせ申し上げます。本日午後3時30分を持ちまして、第64回灘校文化祭Blast!を終了いたします。まだ校内に残っておられますお客様は、お帰りくださるよう、お願いします」

「終わったー」
「いやー、成功してよかったな」
「うん、ほんまに」
「点呼いかな!」
「ほんまや、急げ!」

校長のありがたいお言葉、文化委員長の終了宣言、そして点呼を済ませた後、我々は教室に戻って片付けを始めた。


片付け中。やめろ!フォッケウルフを壊すんじゃない!


片付け中。このときはさほどでもなかったのだが、片付けが終わって西から射してくる夕日を見たとたん、ああ、終わったんだな、という虚脱感と寂寥とが心の中に湧いてきた。


ああ、高2の文化祭も終わってしまったんだな。もうこの学校で皆と騒げる機会も、あと1回しかないのか、と。




では、また来年。灘校文化祭でお会いしましょう。それでは!
                                         続く。